IFRS導入について(その2: 意識と管理体制と比較可能性)

こんにちは。じげん経営戦略部長の寺田です。

IFRSについての記事その1では、日本基準とIFRSののれん償却に対する考え方の違いや、会計基準が日本企業のM&A動向、新興市場について与えているかもしれない要因について書きました。
その2では、IFRSへの移行がもたらす、管理体制を中心とした社内外への影響について記します。

-財務三表を意識した経営-

その1で述べた通り、IFRSにおいてのれんは定期償却されることなくバランスシートに残存し続け、毎年の減損テストの結果として公正価値が簿価を少しでも下回っていれば損失計上となります。のれんだけでなくソフトウェアや顧客資産といった無形資産についても同様のため、資産を多く有する事業では、業績変動による影響が拡幅される可能性があり、日本基準と比べて事業責任者のバランスシートへの意識や緊張感が高まることが予想されます。

代表の平尾からは常日頃より、各事業責任者に対して、「売上高も大切だが、粗利額(じげんの管理会計上は粗利額≒売上高ー広告宣伝費)、営利額を重視してほしい」との指示が出されています。これは、特にインターネット業界では採算性を無視すれば広告投資によって売上高を積み増しすることが難しくないため、我々が生み出す付加価値へのお客様やユーザーからの評価を測るには、売上高よりも利益の方が適切であるとの考えに基づいています。また、例えばセールスやエンジニアといった職種別のリーダーであれば顧客数やCVRといった身近なKPIに注力しがちですが、事業責任者は将来の経営陣として、より包括的な数値責任を持ってほしいとの想いも込められています。

利益よりも更に包括的な経営数値として、バランスシートやキャッシュフロー計算書を含む財務三表、更にはオフバランスの価値も評価対象となる時価総額が挙げられますが、IFRSの導入によって各事業責任者が財務三表への意識付けを強めることにより、例えば余剰資金を活用したM&Aや有形無形資産の購入、クライアントの資金サイクルに着目した新規事業の創出など、上場企業の経営陣として非連続的な成長施策を打ち出すことが期待されています。

-管理体制の統合の円滑化-

M&Aやグループ会社の新設に積極的な企業の内幕では、異なる法人格の集合体を経営するうえでの整合性に頭を悩ませている方も多いかと思います。事業や組織のPMI(Post Merger Integration)に関しては何度かメディアに取り上げて頂きましたが、経理や労務といったインフラ機能の最適化をいかに円滑に進められるかという点も、その後の経営の質を左右する重要な要素となり得ます。

じげんでは2015年後半にIFRSプロジェクトのチームアップを行い、経営管理部の精鋭数名が率いる形で外部のコンサルティング企業や監査法人と準備を進めてきましたが、実際には2014年頃から漠然と、将来的には導入が必要になるだろうとの意識がありました。このため、2013年の上場後に実施した8件のM&A(内、7件が100%株式取得)においては、IFRSという共通の指針を北極星として有していたことが、スムーズな財務会計、管理会計のコンバージェンスに繋がりました。

もちろん、IFRSの適用には時間的、金銭的に相応のイニシャルコスト、ランニングコストが掛かります。また、じげんでは適用年度である2017年3月期に新株予約権によるエクイティファイナンスや2件のM&Aを実施しており、企業規模が拡大するにつれて会計上の論点が複雑化し、導入に到るまでの経緯は決して平坦なものではありませんでした(経営管理部のメンバーへのインタビューも近日中に公開予定ですので、当ブログにてより生々しい現場の声をお届けします)。しかしそれでも、共通の指針に基づくプロジェクトを進めることで、管理関連の連結グループ課題の棚卸ができた点は大きなメリットであったと認識しています。

-市場参加者の比較可能性-

ところで、海外投資家の視点という記事でもお伝えしましたが、じげんでは本年より海外IRを強化しており、2月の香港、シンガポールに続き、5月下旬にはニューヨーク、シカゴへの投資家訪問を予定しています。IFRSに基づく財務数値を開示することで、海外投資家を中心とする市場参加者の比較可能性や株式流動性向上、及びそれに伴うファイナンス手段の柔軟性拡張が見込めると考えています。

私が前職のセルサイドアナリストとして担当していた不動産、住宅、建設セクターではほぼ全ての企業が日本基準を採用していたため、US-GAAPやIFRSを採用している海外企業との比較に際しては段階利益の定義や重視する指標が異なり、困惑したことをよく覚えています。例えば米国の住宅セクターを担当していた同僚アナリストは、EPSとEBITDA以外の指標をほとんどレポートに示していませんでした。逆の立場で考えると、海外の市場参加者から見たときにいかに日本基準の営業利益や経常利益という概念が分かりにくいかが想像できるかと思います。

ちなみに、売買代金や時価総額といった規模の観点からじげんが指数に採用される可能性はまだ低いですが、日本取引所と日本経済新聞社が算出するJPX400でもIFRSの採用は加点項目の1つとなっています。

日本取引所ウェブサイトより転載

 

じげんは、IFRSの導入をテクニカルな会計基準の変更に終わらせるのではなく、経営の質の改善や市場参加者への提供情報の透明性向上を通じて、企業価値最大化に努めてまいります。

何卒宜しくお願い致します。

じげん 寺田