上場インターネット企業の財務戦略の考察とじげんの新たな財務方針(後編)

こんにちは。じげんCFOの寺田です。

前編では、2019年5月に公表した「新たな財務方針」の導入の背景について述べました。
後編では、想定される場面別の当社の「新たな財務方針」の運用についてご紹介します。

ー戦略投資額と配当総額が当期利益の範囲内となる場合ー

「新たな財務方針」においては、2020年3月期以降の事業年度において、当該年度の会社の所有者に帰属する当期利益から戦略投資額と配当総額を除いた金額を、翌年度の自己株式取得枠の上限として設定します(①)。なお、戦略投資額とは、M&Aや資本提携といった、資産性の高い経営資源を獲得するために当社が拠出した投資額を指します。

例えば、2020年3月期の親会社の所有者に帰属する当期利益予想は3,275 百万円であり、現在の発行済株式総数と1株当たり配当予想3円から算出される配当総額は333百万円です。戦略投資額は現時点では何とも言えませんが、仮に2,000百万円とすると、利益や配当が予想通りとなった場合、翌年度の自己株式取得枠の上限は942百万円(=3,275百万円-333百万円-2,000百万円)となる見込みです(②)。

ー戦略投資額と配当総額が当期利益を超えたら?ー

では、戦略投資額と配当総額が当期利益を超えた場合にはどうなるのか。

当該戦略投資を実行後のバランスシートの状況によって、その後のアクションは変わります。当社では安全性の観点から、親会社所有者帰属持分比率(日本基準でいう自己資本比率)40%以上、のれん対資本倍率1.0倍程度以下、をあるべき財務水準と設定しています。

例えば2020年3月期において当期利益3,275百万円、配当総額333百万円に対して、大型の戦略投資として5,000百万円の実行があったとすると、当期利益<(配当総額+戦略投資額)となり余剰資金が発生しないので、原則として翌年度においては自己株式取得も実施されません(③)。

当社のM&Aは過去に高いリターンを達成しており、それらには再現性があると考えています。成長のための戦略投資を最優先の資金使途に設定していることから、経営陣としては本来、こうしたケースの実現を目指したいところです。

ー大型の戦略投資が翌年度以降の自己株式取得判定に与える影響ー

仮に、上記5,000百万円の戦略投資が新たなのれんとして4,000百万円を伴うものだとします。2019年3月期末における既存ののれんは合計8,263百万円なので、2020年3月期末ののれんは12,263百万円となります。2019年3月期末の資本が13,802百万円、当期利益が計画通り3,275百万円とすると、2020年3月期末の資本は約17,000百万円となる見込みで、のれん対資本倍率は0.7倍、当社財務規律の範囲内です。このような健全な状態にバランスシートが保たれている限りは、原則として毎年度の期間損益、配当総額、戦略投資額を変数に、自己株式取得枠設定の有無が判定されます(④)。

一方で、戦略投資額が更に大きなものとなると、一時的にバランスシートが財務基準の範囲外となるかもしれません。その場合は、期間損益の計上に伴う資本の積み上がり等によって財務規律が充足される見込みが立つまで、安全性を優先して自己株式取得を休止する可能性があります(⑤)。

以上をまとめたのが下図です。

ーいくつかのテクニカルな制約ー

なお、バランスシートの状況変化以外でも自己株式の取得方針を柔軟に変更する可能性はあり得ます。

まずはウィンドウの問題があります。会社としてインサイダー情報、例えば決算やM&Aといった重要かつ未公表の情報を有している場合、自己株式の取得を含む売買はできません(ウィンドウが閉じている状態)。M&A案件が水面下で活発に進んでいる際には、当該情報がオープンになるまで(ウィンドウが開くまで)自己株式の取得に制約がかかることがあり得ます。

また、自己株式の取得枠設定時には買付上限価額を設けることが一般的なため、著しい株価の変動等があった場合には、取得枠が未消化となる可能性もあります。

いずれにしても、成長性を最重要視しながらも、効率性、安全性の最適な構成を検討し、株主価値の最大化をはかってまいります。

何卒宜しくお願い致します。

株式会社じげん
取締役執行役員CFO
寺田修輔